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  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第10回〜

「正しい姿勢、合理的な動き」最終回

先日、長崎県佐世保市で小6同級生による殺害事件が起こりました。学校現場においても教育改革のひとつの柱として「心の教育」を実践してきた中、このような事件が起こり人々に大きな心の傷を残しました。

私も高校生の子どもがいますが、もし子どもが間違った気持ちを持ってしまったとしたら放っておくわけにはいきませんし、腫れ物に触るように接したり、様子をうかがうような態度になったりするかもしれません。どうしたらいいのか思い浮かばないし、ただ様子を見ているだけでは時間が過ぎてしまい、親子の関係もうまくいきません。

一人ひとりが相手の気持ちや自分の中におこる危険や不安といった感覚、感情をうまく感じ取れなければ、自分なりのコントロール方法も見えてきません。
日ごろ見過ごしてしまいそうな心のSOSにどう応えるか、正しく感じることができなければ正しく考えるきっかけは生まれません。



【正しい心が正しい姿勢を生む】

この連載でも毎回のように肉体と精神、身体と心はひとつであると繰り返してきました。
正しい心を保持するとき、正しい姿勢もおのずと生まれてきます。この原理から言えば身体を正すとき、心も自然と正され、心を正すとき、身体も自然と正されます。
しかし、心は目に見えませんし、それが正しいか正しくないかを確認するのは難しいものです。

正しい姿勢は手首、肩、膝、足首の力みをとり垂直の力を感じながら立つことです。もっとも外見の形だけが似たようにできても中身が安定していないこともありますので注意が必要です。

この姿勢を正すことは練習のときだけが重要なのではなく、日常的に行われる全ての動作においても正しい姿勢は効率を上げるものですので心がけてほしいものです。
逆説的に言えば、日常生活で正しく動けていない人がグラウンドに入ったときに正しく合理的に動くということは不可能です。野球がうまくなるためには、日常生活を正しい姿勢で正しく動くことが重要になります。

野球の練習はグラウンドだけではなく、日常生活においても同じことで野球の練習は野球のためにあるのではありません。しかし、力みをとり、余分な力を捨てることは難しいもので人間が動作するときは末端部である手足が先に動く人が多いものですが、これでは身体が崩れてしまいます。



【効率のよい体の使い方とは?】


一般的には手足を曲げる或いは伸ばすということは関節部を支点として作用、反作用の力のみのてこの原理で分解されますが、合理的動作においてはその支点が身体の中心になったとき、全体的に無駄な力が抜け必要なだけ身体全体に力が入り、全身が一つ一つの動作に協力するようになります。これが効率のよい身体の使い方といえます。

正しい姿勢、合理的な動きについて本連載で紹介してきましたが、講演時や来院されたときに実際にエクササイズや合理的な動作を体感していただいた方は正しい身体操作というものをご理解いただいたと思いますが、本連載で私の意図が伝わったかどうか疑わしいですが、読者の皆さんの創造力で行間をも読み取っていただき、今後の参考になれば幸いです。
 
(報知新聞社出版「報知高校野球」2004年7月号掲載)

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第9回〜

「子供の学力」

【記述式問題が苦手】

今、子供たちの学力低下が問題になっています。
新聞にも文部科学省が実施した学力調査の分析結果が公表されました。

自分の考えをまとめ、記述式で解答する問題に対して無回答が多く、表現力や思考力、判断力が十分身についていないことを示したとし、記述問題も無回答が半数以上あったと指摘しています。


このことをあるカリスマ受験講師が
「今の子供たちは手取り足取りといった学習塾の指導に慣らされています。その結果、優秀な子供でさえ命じられたことは従順にこなすが、自分で考え工夫することがなく、ただじっととまっています。」

「物事を体系的に捉えたりひとつのことを様々な角度から見ることが苦手です。こういった子供たちは考えるプロセスをどれほど丁寧に説明しても全く関心を示さない。そして、手っ取り早く答えだけを聞きたがる。答えを聞いたところで、何の意味も持たないのに、、、。」

と述べられています。
 


【模倣という方針】

また、この現象は学習を情報量としてしかとらえていない弊害が確実に子供たちの思考力を奪い取っていると見られています。さらに、この現象は反復プリントのブームも原因のひとつと考えられています。

計算を速く正確にできると、、、。漢字を覚えたら、、、。深く考える必要はない、まずはひたすら与えられたものを模倣せよ、という方針で、すべての勉強の仕方がわかるか?考える力が身につくか?

彼は単純なプリントほど、その用い方に注意が必要で生徒自身が新しい物を創造していくように、さらに前進的な学習方が必要と断言されています。



【局所と全体を観る】
「答えだけを聞きたがる」「情報量としか捉えていない」などトレーニングにおいても全く同じことが言えます。これさえやればという単純な反復プリントなどはごく基礎的な学習法であり、まさにウエイトトレーニングそのものです。

先にある大きなものを見ながら身近にある小さなものをみる。身体も同じで全体を観ながら局所と全体を観る感覚が重要です。常にすばやく感じてすばやく動くことを心がけてください。

この連載も残すところあと2回となりました。大きな流れをつかんでいただくために体幹の合理的な膨張構造からそれが基となって動作につなげていく流れを今回と次回でお伝えしていきます。


■春のコンディショニング
春先は精神面ではイライラしたり不安になったりしやすくなります。
不眠や逆にいくら寝ても眠い身体がだるいなどの症状やギックリ腰寝違い、筋肉のけいれん肉離れシンスプリントなども起こりやすくなります。

春は筋腱移行部が硬くなることが多く、特に腹部腰部股関節周囲に影響が出やすくなりますので単なるストレッチングだけでなく、前号の膨張構造を意識しながらこれらの部位を力みなく積極的に動かしてください。
 
(報知新聞社出版「報知高校野球」2004年5月号掲載)

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第8回〜

「達人を目指す意味」

原因と結果

物事には必ず原因と結果があります。原因があるから結果が生じ、原因のないところに結果は生じません。しかし、私たちはつい結果にとらわれ、意識しすぎてしまいます。

例えば、故障をしたとき、何らかの原因があるから故障という結果が生じているにもかかわらず、「原因を分析しないまま痛い部位への処置を行う」「オーバートレーニングだからといって休む」「筋力がないからといって筋トレをする」ということが多く見受けられますが、これらは根本的な原因ではありません。


日本には古くから「所知(しょち)」と「所作(しょさ)」ということばがあり、所知とは知るべきこと、所作とはなすべきことを意味しています。所知(知るべきこと)があればこそ所作(なすべきこと)が生じるのであって、原因を知らないことには改善策(なすべきこと)は生じません。

では、結果を改善するために、原因をどのように分析し、観て行けばよいのでしょうか。
この連載でも述べてきたように、目に映る動きは結果としてそうなったものであり、根本原因ではありません。

一般的によく行われているように「誰々の動きはこのようになっている」という目に映る動きを分析したという理論(例えば足の上げ方、手の振り方、肩の角度、肩甲骨をこのように動かしましょう。という理論)はそれを意識して真似てみてもその選手と同じ効果は得られません。それどころか表面の形だけ真似をすると故障の原因になりかねません。



動作の本質

動作の本質、根本原因は目に見えない所にありますので、このようなことはただ結果だけを追い求めることになり、根本的な改善にはつながりません。また、様々なウエイトトレーニングが行われていますが、「故障をする」「ボールを遠くへ飛ばす」「速いボールを投げる」ためには筋力が必要だといって筋力だけを重要視して、ウエイトトレーニングを行ってみても、力みの根本である浅層筋を鍛えることになり、つながりのない身体を作ってしまいます。その結果、偏った力みによる動作を作ることとなり、単に、凝りを生むに過ぎないのです。

凝りとは「凝り性」という言葉にも表されているようにひとつのことしか対応できず、それ以外の全てのことには対応不可能ということになります。そのような選手はよくいえば、「つぼにはまれば、、、」と言われるように、偶然タイミングが合えばワンポイントだけジャストミートできますが、極めて確率の低い選手のタイプです。また、これらの偏りを改善するためにリラックスしようとして力を抜き脱力できたとしても深層筋が働いていないとそれはただの腑抜けになるだけです。動作においてリラックスなどありえないのです。
無駄のない動き(合理的な動き)ができる選手が一見リラックスして見えるだけのことであり、全身の力が抜けているだけの、つながりのない状態ではないのです。



膨張構造としての体幹
では合理的に動くにはどのようにすればよいのでしょうか?
この連載で合理的な動作を生むのは「姿勢、呼吸、集中」であるといいました。
私たちの身体は体幹部分が膨張する構造になっており、その膨張構造は脊柱を保護、強化する機能があり、呼吸と重要な関係があります。

例えば重いものを持ち上げるときや排便時などの力んだ時に息を止めてお腹に力をいれて(呼気筋群の収縮)、腹腔、胸腔の内圧を上昇させ梁(はり)構造として力を伝達します。つまり、上下方向にかかる大きな力、腰部などの浅層筋にかかる負担を内からの圧力で大幅に減少させるというものです。

そうすることによって力学的に腰椎にかかるストレスは約50%になるといわれています。しかし、この方法は、大変有益にもかかわらず、完全な無呼吸状態になるため、力を持続することができず、極めて短い時間しか作動しませんし、いわゆる「力んだ」状態ですので動作を硬くしてしまい合理的な動作につながりません。

そこで、呼吸しながら継続してこの梁構造を自在にコントロールする技術が必要になります。この腹腔内の梁構造の一部を「肚」とみなすことができるのですが、連載で紹介するエクササイズはこのような状態を作り出すための一部であり、腹腔、胸腔の内圧を常に一定に保つためのものです。深層筋が働き、充実した体幹を作ることではじめて力みのない上肢、下肢の動きが生まれ、テコの原理、力のベクトルだけでは説明できない大きな力が生まれてくるのです。ここに、体幹ベースボールの真髄があるのです。

具体的は方法については、今まで紹介してきたエクササイズを再度確認してみてください。ただ単にまねるのではなく、身体の内部感覚を研ぎ澄まして行ってください。



合理的動作を獲得するために
こころと身体の一致、合理的な動作とは、動作の本質は目に見えないところにある、、、等々本連載で述べてきたことですが、皆さんの周りで起こっていることを例にあげてみました。自分自身のこととしてとらえて自己チェックし、自分の身体に目を向けて観てください。

チームのことを考え気配りをしても、頭で考え意識的に行っていては流れを正しく感じられずに気疲れするだけです。新チームになってキャプテンになった人、こんな経験ないですか?自然に周囲の環境を正しく感じることができれば、普通にまわりを把握することができ、気疲れもしないはず、すべてのことに対して見て聞くのではなく、こころを落ち着けて観て聴いてみてください。

安定を求めるがゆえに、その動作の主体となる筋肉のみが必要以上に働いてしまう。このような選手の動きは手足が力み、どことなくぎこちなさを感じます。不安定に強くなることを求めれば、数多くの深層筋が関連協調しあっておのおのの力が助け合い、必要なだけ働くようになり、手足は自由に使えるようになります。
「力まないでおこう」と思っても力んでしまう原因は他にあります。深層筋が働くように伸びのエクササイズをしっかり行いましょう。

「やろう!!」という気持ちがあるのに心と身体が合っていない、、、。練習中にもかかわらず「こころここに在らず、、、」という人もいるかも?このようにこころと身体が混乱しているとストレスはより大きく感じます。ストレスはあなたの取組み方次第、自分の内側に眼をむけ、目的と方法が理にかなっていて、心と身体に秩序が生まれればストレスは小さくなります。

練習や試合で指導されたことを頭で意識するだけでは合理的な動作は生まれません。意識しなくても反射的にできるように日常生活から改善していきましょう。いいプレーができた時、あれこれ考えずに無心でやっていた自分を思い出してください。
逆にスランプに陥っている選手は、あれこれ考えすぎていませんか?野球は頭でやるものではなく、身体で感じてやるものですよ。自分自身を自分自身で客観的にじっくり観察しましょう。部活動は経験を学ぶもうひとつの学校です。もともと、あなたには、意欲的に学ぼうとする学生を指導する教師としての機能が備わっているのです。
 
(報知新聞社出版「報知高校野球」2004年3月号掲載)

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第7回〜

本連載も7回目を迎えました。
スポーツ界では「古武道」がブームになっているようですが、真の野球の達人になるには、「古武道」の形だけを真似ても全く意味がありません。
今回は、冬季練習を前に、練習の本質について考えたいと思います。


「達人を目指す意味」
最近、「先生の指導されているエクササイズは古武道からきているのですか?」といった類の質問をよく頂きます。タイトルにも「達人を目指す」とありますし、世間でも「古武道」という言葉が流行しているようです。


私が本連載で紹介しているエクササイズは身体を力みなくいかに合理的に使うかということから生まれたもので決して古武道から生まれたものではありません。また、「道」と名がつくものはそんな簡単に習得できるものではありませんし、武道とは、日本の文化が生み出した心と技と身体の探求の集大成であり、歴史であると思います。

巷では武道(武術)的な動作をスポーツに取り入れることがブームになっているようですが、動作というものはもっと深い意味を持ち、一つの目的(走る、打つ、投げる等)にとらわれ、表面だけ武術的な動きを部分的に取り入れても一時的には効果は見られるかもしれませんが、根本的な改善は望めません。達人を目指すためには心、技、体の本質的な意味、つながりを自分自身の身体で正しく理解することが重要です。

歴史をさかのぼってみても、武術の鍛錬だけで、物事の本質に気付き、道を悟るにいたった達人は少ないのです。剣の達人といわれる山岡鉄舟先生は手助けとして、禅を修行し、合気道の植芝盛平先生は神道や古事記などとの関連において武術の中に悟りを見出されました。

武術のみにおいて悟りを開いた人も、上達のために戦うときの動作だけでなく、日常生活すべての動作を正し、精神、思考とを調和することで悟りを開いておられます。 私の知人にもすばらしい武術の達人がおられますが、企業経営を通じて心を養ったと聞いております。これらの例からも達人と呼ばれる人は、身体の用い方だけではなく、心底から物事の本質を理解した人たちだと思われます。


「心と身体の調和=深層筋」

心で得たものが、身体そして技術として現れますので、心が上ずった状態で安定した姿勢、安定したプレー(動作)は生まれません。くどいようですが、目に見えない心の働きと目に見える身体の働きはひとつに結ばれています。ひとつの動作を捉えてみても、学問の一専門分野に収まりきれない膨大な要素を含んでいますので、実践、あるいは体験的な知識、心身の相関性を重要視しなければなりません。そこで単なる頭だけで理解しているつもりの知識とならないように、自分自身に目を向け体幹の深層筋の動作における重要性を知ることが必要となります。


「野球をやる本当の意味」
名プレーヤーがスポーツを引退するとともに人生までフェードアウトしてしまうケースが多くあります。ということは、その人にとってスポーツが総合的に見て、人間形成の役に立っていなかったということを意味します。

皆さんにとっては秋の大会を終え、来シーズンへ向けて辛い冬季練習が始まりますが、野球をすることの意味をもう一度考え理解し、勝ち負けを超える境地まで近づくために練習に取り組み、日常生活を送ってほしいと思います。

日本の文化と合理的動作の間には切っても切れない深い関係があります。
古いものがすべてではありませんが野球を通じて日本古来のよき文化伝統を正確に復活させ、スポーツをする意味をもう一度再考し、創造力豊かな若い世代の方たちが実践し新しい問題意識を持って取り組まれることを期待します。

 
(報知新聞社出版「報知高校野球」2004年1月号掲載)

お知らせ
「野球達人」を目指すバランストレーニングの連載も7回を迎えました。冬季練習を前にいろんな計画を立てておられると思いますが、キネティックフォーラム主催の研修会を開催いたします。参加を希望される方は、下記事務局までご連絡ください。

  キネティックフォーラムテクニカル講習会
日時:平成16年2月8日(日)13時〜
場所:大阪府立門真スポーツセンター (なみはやドーム)
申込み、問合せ(06)6978−3233 info@kinetic.co.jp

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第6回〜

動作の基本「投」

体幹ベースボールとは体幹いわゆる胴体が中心となり動作を作ります。そこから四肢(手足)をうまくコントロールすることで力みのない柔らかな、一見ゆっくり見えて実は速いという合理的な動作ができるようになります。

そのためには昔から言われる肚というものが特に重要になり、筋肉で言えば腸腰筋、横隔膜などの深層筋が主動に働き、強靭でしなやかな体幹が全身をコントロールする事になります。


しかし、このように体幹から生まれる合理的な動作は、簡単にできるものではく、腕立て、腹筋、背筋、スクワット等長くトレーニングを積み重ねて行けばいくほどバランスのよい選手が、次第に減少していく傾向にあるのは悲しい事ですが、それは体幹と手や足のつながりを無視してウエイトトレーニングをがむしゃらに行うのが原因ではないでしょうか。

更にバイオメカにクス的分析を行い、あたかも理論的科学的なトレーニングとして、肩のインナーマッスルを鍛えることが流行しているようですが、かえって肩周囲のバランスを崩して可動域の制限や痛みにつながる事も多く見受けられますが、結果的に局所的に鍛えることで体幹から四肢にエネルギーを伝達して全身を合理的に使う動作ができなくなります。日頃、部分的に鍛えている四肢が先に働くことで四肢の力みにつながり体幹部を使いたくても使えないという結果 を招きます。

小、中学校でセンスの良い身体の使い方をして注目されていた選手が、高校でがむしゃらにウエイトトレーニングを行うことで筋肉がつき、身体は大きく成長したにもかかわらず、センスの良い身体の使い方が失われ、故障を繰り返した結果、姿を消していくという選手が日本中にはたくさんいるというのが現状です。

投球動作においても、手や足の動きにとらわれると、バランスの悪い不安定な動作をタイミングだけ合わし、とりあえず帳尻を合わせた中身のつながらない動作になりかねません。これでは、伸びのある生き生きとしたボールを投げる事は不可能です。

四肢の動きだけを捉えた理論が流行しているようですが、それらを鵜呑みにするのは危険すぎます。また、それらの理論も日々変化を続け徐々に局所的なものから変わってきていると思います。

しかし、まず外見上の動きの分析からそれも四肢の動きからの分析は合理的な動作が成り立つ要素の主従関係から考えると本質から逸脱しています。投球時の重要な要素のひとつである前腕の回内、回外をとらえてみても肋骨一本一本の動きが関係し左右されます。

肋骨の動きとなれば呼吸が重要となります。呼吸が重要となれば姿勢が重要となり、姿勢が重要となれば深層筋の連動が重要となります。深層筋となれば自分自身の内部に目を向け、集中することから感覚的なことを心で観る必要がでてきます。

体幹ベースボールは体幹内部を体感する事から始まります。今回も紹介するエクササイズを通じて自分自身の体幹内部を感覚してください。


ご質問はinfo@kinetic.co.jpまで
   
■夏、大会前のコンディショニング
今年は梅雨が長く、各地で予選が行われていた時期は、朝晩が肌寒いくらいの気候でしたが、各地の代表校がそろい、この本が出版される大会直前はきっと暑い毎日だと思います。

脂っこいものを食べた後、冷たいものを飲むと脂肪が消化されにくくなります。胃腸の弱い選手は十分気をつけましょう。

また、昨年の夏の甲子園大会では足のけいれんを訴えた選手が多く見受けられました。急激な温度変化に対応しにくく、外の暑さと室内の冷気で次第に身体のバランスが崩れてきます。疲労が重なると風邪もひきやすくなります。

8月8日は暦の上では立秋ですが、これからが夏本番です。飲食、空調、睡眠に気をつけコンディショニングを整えましょう。
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年9月号掲載)

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第5回〜

動作の基本「攻」

前回は走・攻・守の「走」について考えましたが、多数ご質問、お問合せをいただきありがとうございました。
そこで今回は、「攻(打つ)」について話を進めていきます。

「腰で打て」は正しい?
動作の本質は走・攻・守どれをとっても同じものです。「打つ」ということも本質は「走」と同じものであり、それぞれを外見上だけ無理やり整えようとしても合理的な動きは成立しません。


例えば、「腰を回せ」「下半身(足)を使え」等の言葉から、腰を捻ることでバットが正しく出るように思われている方がまだまだ多いようですが、実際はどうでしょう。

右バッターを例に挙げて検証してみましょう。インパクトの動作は体幹を右から左へ回旋することになります。この動作と同じように、体幹を右から左に回旋するのですが、その際誰かに骨盤の左右を保持してもらい、反対方向(インパクトと反対の方向)へ力を加えてもらいます。その力に抵抗するように腰を右から左(インパクトの方向)へ回旋しようとすれば、上半身に力が伝わらないのがよくわかると思います。ということは腰を捻れば捻るほど、上半身に力は伝わりにくくなり、その結果バットも正しく出ないということになります。

それではどのようにすれば上半身に力が伝わるのでしょうか。ためしに誰かに左右の腋(わき)の下(腋下)に手を入れてもらい、インパクトと反対の方向に力を加えてもらいます。それに抵抗するように上半身をインパクトの方向に捻ります。さあ、どうでしょう。今度は腰は大して回ろうとしていないにも関わらず、上半身にしっかり力が伝わっているという事実に気付くと思います。そうです。バットが正しく前に出るということは、腰を捻るということではなかったのです。

この実験と同じように、ただ体幹を回旋するだけでは、重心が浮いてしまいますから、体幹下部=肚(はら)の充実(腸腰筋、横隔膜の作用)が重要になってきます。やはり大切なのは、深層筋であり、日本で古来から言われている肚(はら)です。

ここでいう肚とは、腹部でも深部ですのでどちらかといえば、後ろのほうが近いかもしれませんが、しかし、一般的に言われている腹とは違います。


「打の本質」=深層筋の作用
深層筋がはたらくためには、心と身体の一致ということが必要になってきますが、それを言葉で表すのは、不可能かもしれません。それは、言葉で言い表せないところに動作の本質があるからです。力を入れれば入れるほど、強い力が出るということは誤りであり、動作の改善、あるいは新しい動作に挑戦する場合、なかなか思い通りに行かないものです。

しかし、窮屈でも重力に逆らって抵抗する筋力をつけることが一般的に行われていますが、このようなことは、動作の本質から離れていってしまいます。窮屈であったとしてもその苦しさがどこから来るものかわからなければ、改善する可能性は少なくなってきます。
柔らかい方がよいことは誰でも分かりますが、柔らかさを求めることまで、無理をして頑張るだけという方法をよく見かけますが、こういう考え方はあまりにも単純で、誤っている場合が多いのではないでしょうか。

心と身体の一致、自律神経においても、受容体と効果器はともに逆転しあうと言われるようになりました。言い換えると一方通行ではないということから、筋肉も単に動作を作る運動器としての作用だけではなく、感覚器(センサー)としても有効に活用し、身体全体が耳となり目となるように身体を研ぎ澄ます事が大切です。

感覚とは一つの動きが自分の中で何かを感じることができれば、次々に現れてきて、だんだん自分の中でつながってくることで深い理解が生まれます。感じることが先で理屈を考えることはその後からです。たとえ、素振りを何百回繰り返したとしても、毎回初体験であり、二度と同じ体験は出来ません。その微妙な違いを感じ取り新しい感覚から大切なものを感じ取ることが深く理解する第一歩ではないでしょうか。


ご質問はinfo@kinetic.co.jpまで
   
■夏の大会へ向けてのコンディショニング
この時期になると、梅雨の走りの冷たい雨が多くなり日々の温度差から腰痛を起こしたり寝違えを起こす人が多くなります。

その後、本格的に梅雨に入ると、湿度が高く蒸し暑い季節となります。練習などで、発汗をした後、冷房で身体を冷やしたり、寝るとき半袖、半ズボンで明け方身体を冷やしたり、エアコンをかけっぱなしで寝たりすると身体が重だるくなったりします。
それが更に進むと、筋肉や関節に湿度と冷えによる影響が現れ、ふくらはぎのけいれんや関節痛を起こすようになります。

夏の大会のことを考えれば、長袖を着用し、エアコン、扇風機が直接あたらないようにして下さい。
それだけでも、かなり効果があがります。
食生活も脂っこい食べ物と冷たいもの、例えばから揚げとアイスクリームなどの食べ合わせには十分気をつけましょう。
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年7月号掲載)

 

  野球の達人を目指すバランストレーニング 〜連載第4回〜

動作の基本「走」

前回は「走」「攻」「守」について考えましたが、今回はその中でも最も基本となる
「走」
について考えます。

野球に限らず、どのスポーツでも「基本は走ることである」と言われています。
下半身を鍛え、持久力をつけるだけでなく、すべての動作は身体が移動することから始まりますので、「走」が基本になることは間違いないといえるでしょう。


動きとして身体を大きく移動することがない動作でも、身体内部では内力のかかり方は変化しており、このことからも必ず重心の移動が行われているということになります。

しかし、この「走」ということの指導も、見た目の動きや外見の形に偏りすぎているのではないでしょうか。例えば、「腿を高く上げる」「地面を強く蹴る」「腕を大きく振る」「前傾姿勢をとる」「ストライドを伸ばす」など、現場ではよく耳にする言葉ですが、どれも各論に偏りすぎており、結果として「力み」を生み、円滑な動きを阻害してしまいます。今流行している「なんば歩き」も、前傾をし、右手と右足、左手と左足を同時に振るというように伝わっていますが、これも一般的には間違って理解している人が多いようです。

世界のトップランナーでなくとも、チーム内で走るのが速い選手を見ると、軽やかで柔らかく、リズミカルで自然な走りをしているということに気付くのではないでしょうか。しかし、これも作るものではなく、結果として生まれてくるものです。

では走るということにおいて、何が重要なのでしょうか。走ることを単に物が移動することと考えると、重心の移動に対し、ブレーキさえかけなければ、理論上加速し続けることが可能になります。これをそのまま走ることに置き換えることは不可能ですが、いかにして、これに近づくことができるかがより速く走ることにつながっていきます。ということは、接地をスムーズにすることから足底の力みをなくし、重心を正しく移動させ、立脚中間位を越えてからの力みによる蹴りをなくすことが重要になります。

蹴るという行為をなくすことで、遊脚の動きがスムーズになり、気合だけの野球部走りから、流れるような走りへと変化しますが、実はこれらの動きはほとんどの人が体験しているものなのです。
例えば、「氷の上やぬかるみの中での歩行」「浅瀬の石渡り」「焼けた鉄板のように熱くなったプールサイドでの歩行」などは、意識して蹴らず、反射的に合理的な動きとよく似た動きを行っているのです。

「走」を分析すると、地面に足がついた状態を基準に前半と後半とに分けて考え、右足が地面に着いて(着地)から右足の真上に重心が乗る(立脚中間位)までを前半。
そこから右足が地面を離れる(足尖離地)までを後半とすると、前半の部分で「ブレーキをかけずに、いかに重心を速く移動させるか」が重要で、蹴ることに集中すると逆に抵抗を大きくし、ブレーキをかけるだけではなく、心もそこにとらわれてしまいます。

終わったこと(役目を終えた側の足)をクヨクヨ考え未練を残すより、これから始まるその瞬間瞬間(着地から重心移動)に集中していくことが心と身体の調和、合理的な動作を生み出します。

腕の振りも同様で、「腕振りは大きく」といったイメージを持つ人が多いかもしれませんが、重心をスムーズに移動するということから考えると、腕は重要ではなくなってきます。
大切なことは、安定して移動する体幹と足とがうまく連動し、安定しているかということであって、腕と足でタイミングをとったり、腕と体幹で足をリードしたりすることではないのです。

腕は全体のバランスをとり、安定した体幹と足の補助にすぎません。また、腕をリラックスして振れと言いますが、それも安定した体幹があるから実現するものです。
つま先でキックを意識して走ったり、必要以上に腿を上げたり、足を振り出して走るのではなく、「腸腰筋をいかに使うか」「主となる体幹と足をいかに連動させるか」ということを考えトレーニングを行ってください。

ご質問はinfo@kinetic.co.jpまで
   
■春のコンディショニング
下腿内側周囲の腫れや痛みを総称してシンスプリントといいます。「初心者病」とも言われ、圧倒的に春に症状を訴えることが多いのが特徴です。
シンスプリントには様々な要因が考えられます。代表的なものとして睡眠不足。これは睡眠不足をすると結果的に筋腱移行部が硬くなり、すねに負担がかかりやすくなるからです。もう一つは姿勢。悪い姿勢から足根部や下腿両骨の捻れの自由度が損なわれることによって、すねに負担がかかりやすくなります。

これらの原因を少しでも軽減ためには、規則正しい生活、股関節の自由度がキーワードになってきます。
ここで柔軟性といわず「自由度」と表現したのは、単に静的に股関節が柔らかいだけでは、動作中に正しく思い通りに使えることができず意味がないからです。もちろん硬くて動かないのも良くないのですが、ただ単に柔らかいだけで思うように使えなければ同じようなものです。

硬くても柔らかくても思い通りに使えなければ逆に抹消の方に力みが入り、結果的に下腿部あるいは足根部にストレスをかけることになり、シンスプリントが発症するのです。
このように動的に無駄があるとよく「リラックス!!」といいますが、それ自体が無理なことです。必要な部位が条件に応じて瞬時に必要なだけ充実することで無駄が無くなりますが、必要なところが出来ていないのに、力をただ抜いても正しい動作というものは成り立ちません。

対策とし連載で紹介するエクササイズを特に股関節周囲の深部感覚に注意しながら行いましょう。
   
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年5月号掲載)

 

  野球の3拍子「走、攻、守」 〜連載第3回〜

「走、攻、守」3拍子がそろった選手が少ないのはなぜでしょうか。各動作を全く別の動作として覚えようとするからではないでしょうか。今回は野球に必要な基本的動作について考えます。

野球において必要な要素は、「走、攻、守」いわゆる走る、打つ、投げる、守るという基本的な動作です。
この時期これらのレベルを高めるために、各動作の目的別技術練習が行われたり、より効果を高めるために別メニューとして筋力トレーニングが一般的に行われています。
それは、「走、攻、守」の技術は筋力の上に成り立ち、技術練習ばかりしていても上達しないし、故障をするという方程式からなのでしょうか?


巷では、様々な理論としての「スポーツ医学」や、「科学的トレーニング」が言われているにも関わらず、故障者は減らず、あらゆるスポーツで世界との差がひろがっているのはなぜでしょうか?

それは、「走、攻、守」の動作を別々の動作と捉え、一つ一つを覚えようとしたり、筋トレの結果、偏った身体で硬い力に頼って動作を行っているからではないでしょうか。
例えば、走攻守の一つ「攻」の「バッティング」練習を例にあげてみても、練習を重ね、レベルアップすればするほど各段階において微妙な点、各関節の位置や角度など、あげればきりがないほどありますし、これらの全てを極めようとすると何年も歳月をかけながら、まとまらずに中途半端で終わってしまったりします。

また、トレーニングにおいても、「何回素振りしたら」とか、「何時間練習したら」とか、「何キロ持ち上げたら」ということにとらわれたり、疑問があっても自分の身体で考えようとせず、すぐに質問し教えられたことをそのまま鵜呑みにしたり、あるいは都合のいいように解釈し、自分にあうように変更して練習しているケースが非常に多いと思います。このように楽を求めるがゆえに、苦を作り、遠回りしているのです。

時間や回数は単なる目安にすぎず、大事なのは、『身体のどこに何を感じるかということ』を積み重ねていくことです。何かを感じなければ考えようがありません。
「走、攻、守」に限らず基本は体幹の深部の見えないところにあり、全ての動作、全ての生活に通じるものです。そこで、内部感覚を研ぎ澄まし、身体で考えなければ原理は見えてこないというものです。

来年からニューヨークヤンキースでプレーする松井選手はキャンプ時にバッティングのチェックリストを自ら作成し、それを一つずつクリアーできていることを確認し、シーズンを迎えるそうですが、このことは、身体の感覚がいかに重要であるかという良い例だと思います。

表面的なかたちだけの単なる習得は最終目標ではありません。
技術的な側面は原理そのものではなくそれの応用です。
言い換えれば、「技術」は本質的な原理が特定の状況に応じて現れたものであり、その技術をマスターしても状況が変われば対応不能となります。
技術に頼ることはそのマスターした技術の適応する場合のみに限定されるため、自ずと限界があります。

真の習得とは本質的な原理を理解したときに始めて可能となります。
テクニックというものは本質によく似たものですが、有る段階のレベルまで導いてくれるものであり、その後は身体内部の感覚が支配する世界となります。
したがって、個々の身体内部の感覚を言葉や文章で表現することは困難ですので、本連載で紹介しているエクササイズや練習中の各動作を反復し、自分自身で見極める訓練を行ってください。

本質的原理を理解するということは知識的な理解を意味するものではなく、真の自己の
発見は正しい動作を繰り返し続けることによってのみ得られるもので、その結果合理的な動作が可能となり、故障をせず、競技力を向上させていく近道となるはずです。

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■冬から春のコンディショニング
そろそろ進級、そして卒業、入学の季節です。新入生に多い故障として、シンスプリントがあります。指導者の方からも、最近の生徒は練習するとすぐ「痛い」と言う。ということをよく耳にします。
せっかく、希望をもって入部した生徒が、「痛い」ことによって不安を抱き、部活を離れていっては何にもなりません。生徒に対してモチベーションを高めるためにも、故障者を出さないことが第一条件になってきます。

「動作の本質」で述べたように手足で何かをしようとすると動作の本質から外れることになります。体幹がうまく使えていないと、前腕、下腿で動作をしようとしてしまいます。その結果、肩や股関節が硬くなり、更に前腕、下腿だけで動作をしようとします。それによって、前腕や下腿がどんどん緊張してきます。

新入部員に多い怪我は、前腕(肘)や下腿(すねや膝、足首周囲)に多いのはこういった背景があります。ボールを投げたり、打ったりする場合は手に意識は行きがちですが、で
きるだけ手足の意識をなくし、「いかに体幹をうまく使うか?」「いかに自分の意図
する通り身体を使えるようになるか?」が重要です。
また、前腕、下腿の筋肉の形は羽状筋(鳥の羽状のかたちをした筋肉)が多いためス
トレッチで伸ばす方向を考えることが重要です。
   
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年3月号掲載)

 

  筋力トレーニングを再考する 〜連載第2回〜

はじめに
第1回は故障をせず、競技力を向上させるためには、
@効率的に円滑に動くこと 
Aそのために手足や道具にとらわれず、体幹が主に働くこと 
Bそして、自分自身の内に目を向け、頭ではなく身体で考えることが、重要であると述べました。

第2回は冬期練習で一般的に行われている筋力トレーニングを再考しながら「何をどのようにすればよいか?」を考えます。


かつては、野球選手にとってタブーであった筋力トレーニングも今では幅広く一般的に行われています。では「その目的は?」と聞かれてあなたは何と答えますか?「筋トレで故障防止、飛距離アップ」なんて声が聞こえてきそうです。
しかし、ほんとうに筋トレで故障者を減らし、競技力を向上することができるでしょうか?
皆さんの頭の中にも、『故障=筋力不足』『飛距離あるいはスピードがでない=筋力不足』という公式ができているのではないでしょうか?

故障する原因は、筋力ではなく、非合理的な動作から生じる身体の偏りにあります。例えば足首の柔軟性に左右差があるにも関わらずスクワットを行うと、曲がりやすい足首の方に身体が傾き、繰り返し続けていると全身のバランスを崩すことになります。
ほかにも、ランニング時、曲がりやすい足首は接地時間が長く、曲がりにくい足首はつま先に力がかかり過ぎることから、走ると片方の足だけ痛くなるという結果になります。このような例からも、身体の偏りをなくすことが重要であるということがわかると思います。
また、競技力向上に関してこんな興味深いデータがあります。

『筋トレで垂直跳びがアップするかどうか』を検証するため、一定期間あるグループは筋トレだけを、あるグループは垂直跳びだけを行いました。その結果、垂直跳びだけを行ったグループの方がアップ率は高かったというのです。

これは、パフォーマンスを向上させようと思うと、筋肉のみを鍛えるよりは、まずその動作そのものを正しく繰り返した方が有効であるということを意味しています。
感性を無視した、がむしゃらな筋トレは浅層の筋を主に鍛えるため、力みを生みやすくなります。同じトレーニングを行っても働きやすい筋肉と働きにくい筋肉があり、これらには個人差や左右差があります。いかにエネルギーのロスを少なくし、その動作の質を高めるかということが重要になるのです。

対策方法
では、何をどうすればよいか?
目に見える大きな筋肉より、見えない深部の筋をいかに動かすか?ということを身体で考えましょう。これは、自分自身を見つめなおさないとできないですし、また、このような動作は自分自身の心が安定していないとできません。安定するためには、腸陽筋が機能していないとできないことになり、腹が据わるという古い言葉につながります。

重たいものをただがむしゃらにあげているだけでは、重たいものをあげられるようになっても、それが野球の競技力向上にはつながらないどころか連載のテーマである
「身体の局所と全身の調和」
「身体と心の調和」
「合理的な身体の使い方」から逸脱しています。
最近の風潮として全てのものが、実践よりも理論、経験よりも知識偏重によって行われています。
特に身体感覚というものは学問になりにくく、研究対象としては非常に難しいものです。しかし、生きた身体【自分自身】をみなければ単なる物としての理論から出発してしまいます。 
     

■冬場のコンディショニング
冬は万物が静かに沈み、消極的な季節。しかし、樹木でも一見枯れているようで、実は土の中で根をどんどん伸ばしています。人間も同じ。冬は発散せずに貯蓄する時期なのです。寒い時期にハードなウエイトトレーニングを行うと、春先に筋肉を損傷、特に筋腱移行部を受傷しやすくなり、疲労が取れにくくなるのもこの時期の特徴です。身体の深部感覚を意識することで浅層筋の力みを消し、負担のかからない程度の負荷で、下半身を中心に多種目を反動を使わずにバランスよく行いましょう。
   
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年1月号掲載)

 

  合理的な身体の使い方と心の調和 〜連載第1回〜

当連載では、バランスを整えること(正しい身体の使い方)により、障害防止と競技力向上を目指します。動作のスピードを生み出すのは力だけではありません。日本古来の武芸の達人のように、無理、ムラ、無駄のない合理的な動きを身につけましょう。第1回は「なぜ故障をするのか?」 です。

同じ練習をしてもすぐ故障する選手としない選手がいませんか?指導者や選手、保護者にとってスポーツによる故障はもっとも頭の痛い問題ではないでしょうか。
「この故障さえ治れば…。」今夏の甲子園でも故障に泣いた選手やチームが多数ありました。
同じ年齢の選手が、同じ練習を行ってもすぐ故障をする選手としない選手がいます。


また、監督さんから「昔の選手はこれぐらいでは故障しなかったのに・・・。最近の選手はちょっと無理するとすぐ故障する。」というような話をよく耳にします。
すぐ故障する選手と故障しない選手の違いはどこにあるのでしょうか? 
症状があるにも関わらず、「検査をしても異常がない。」でも「投げると痛い。」「走ると痛い。」という選手が多いのはなぜでしょうか。
故障の原因は、筋力でしょうか? 柔軟性でしょうか? 練習環境でしょうか? それとも選手の根性が足らないからでしょうか?
本連載では、野球における障害防止、競技力向上を目的に、誰もが頻繁に使う『バランス』という言葉を、「合理的な身体の使い方」「身体と心の調和」「身体の局所と全身の調和」捉えて考えていきます。

「人の心も物にうつればはっきりと現れ、一つの動きに執着すれば必ず心は見えるようになる。」とは、剣の達人、柳生宗矩(やぎゅうむねのり)の言葉です。これは、私たちの心はあることに執着しがちであるということ。心は色も形もなく目で見えるものではないということ。そして、心が何かに執着すると心はそのまま見えるようになるということを説いています。
これを野球に置き換えれば、手を使う動作(スポーツ)は手に頼り、足を使う動作は足に頼り、道具を使う動作は道具に頼ろうとする、と考えられます。
例えばボールを投げる場合なら、ボールを持つ手に意識が集中し、力を生み出す体幹が手薄となります。本来、手はボールと体幹をつなぐものであるにもかかわらず、手足や道具に頼ってしまうと本末転倒。
結果的に、身体のバランスを狂わせ、非合理的な動作になってしまい、肩や腰や肘にストレスがかかることになります。このような動作を繰り返すと、故障がちになり練習を積むことができなくなり、ごまかしながら試合に出ることになります。
そうなると当然、競技力も向上してきません。

監督「どうした?」
投手「肩の調子がおかしくて。」
監督「いつからなんだ!?」
投手「張った感じはあったんですけど、今日投げると痛くて」
監督「なぜ、もっと早く言わなかったんだ!!」
投手「すみません、、、。」
監督「とりあえず、今日はノースローで、アイシングしておけ!!」

よく耳にする会話ですが、エースが突然こんなことになったら大変です。
痛みとは結果であり、根本的な原因が必ず身体の中に存在するはずです。
にもかかわらず、局所に対する対症療法だけでは根本的な改善は期待できません。
それどころか、結果的に選手寿命を短くしてしまいます。
大切なのは、効率的に滑らかに円滑に動くことです。
そのためには、自分の身体がどのようになっているかを知り、円滑に動けない原因を改善することです。
イチロー選手も「そのかたちではなく、その感覚が大切だ」と言っていますし、心が対象(局所)にとどまると、そこに意識が集中し他は手薄となります。
表面的なかたち(症状)に隠された動作の本質に目を向け、物事の枝葉にとらわれず、自分自身の内に目を向けることで浅層の骨筋だけでなく深層筋との調和が生まれ、腸腰筋を中心に体幹が主に働く身体の使い方から真の合理的動作が生まれてくるはずです。
   
次号からは、故障を防ぎ競技力を向上させるために、どのように身体を捉え、何をすればよいか具体的な方法をご紹介します。
   

■コンディショニングの考え方(季節に心身を調和させる)
春夏秋冬のコンディショニングは自然と調和するのが重要です。
夏は草木が最も成長し、人間も活動的になります。練習でもしっかり汗をかき水分を取るように心掛けてください。気分的にも発散しないと身体内に熱がこもり逆に暑く感じます。そうなると冷房や冷飲を欲するようになり風邪や下痢につながります。
秋は全てのものが見を結ぶ時期です。選手にとっては、試合や練習の結果を出す時期です。夏の疲れを早く取り、練習は身体を休める方向で考え、質の高い刺激を入れ、発汗し過ぎないように心掛け、発汗した場合もすぐふき取るように心掛けてください。
   
(報知新聞社出版「報知高校野球」2002年9月号掲載)

 

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