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  筋力トレーニングを再考する 〜連載第2回〜

はじめに
第1回は故障をせず、競技力を向上させるためには、
@効率的に円滑に動くこと 
Aそのために手足や道具にとらわれず、体幹が主に働くこと 
Bそして、自分自身の内に目を向け、頭ではなく身体で考えることが、重要であると述べました。

第2回は冬期練習で一般的に行われている筋力トレーニングを再考しながら「何をどのようにすればよいか?」を考えます。


かつては、野球選手にとってタブーであった筋力トレーニングも今では幅広く一般的に行われています。では「その目的は?」と聞かれてあなたは何と答えますか?「筋トレで故障防止、飛距離アップ」なんて声が聞こえてきそうです。
しかし、ほんとうに筋トレで故障者を減らし、競技力を向上することができるでしょうか?
皆さんの頭の中にも、『故障=筋力不足』『飛距離あるいはスピードがでない=筋力不足』という公式ができているのではないでしょうか?

故障する原因は、筋力ではなく、非合理的な動作から生じる身体の偏りにあります。例えば足首の柔軟性に左右差があるにも関わらずスクワットを行うと、曲がりやすい足首の方に身体が傾き、繰り返し続けていると全身のバランスを崩すことになります。
ほかにも、ランニング時、曲がりやすい足首は接地時間が長く、曲がりにくい足首はつま先に力がかかり過ぎることから、走ると片方の足だけ痛くなるという結果になります。このような例からも、身体の偏りをなくすことが重要であるということがわかると思います。
また、競技力向上に関してこんな興味深いデータがあります。

『筋トレで垂直跳びがアップするかどうか』を検証するため、一定期間あるグループは筋トレだけを、あるグループは垂直跳びだけを行いました。その結果、垂直跳びだけを行ったグループの方がアップ率は高かったというのです。

これは、パフォーマンスを向上させようと思うと、筋肉のみを鍛えるよりは、まずその動作そのものを正しく繰り返した方が有効であるということを意味しています。
感性を無視した、がむしゃらな筋トレは浅層の筋を主に鍛えるため、力みを生みやすくなります。同じトレーニングを行っても働きやすい筋肉と働きにくい筋肉があり、これらには個人差や左右差があります。いかにエネルギーのロスを少なくし、その動作の質を高めるかということが重要になるのです。

対策方法
では、何をどうすればよいか?
目に見える大きな筋肉より、見えない深部の筋をいかに動かすか?ということを身体で考えましょう。これは、自分自身を見つめなおさないとできないですし、また、このような動作は自分自身の心が安定していないとできません。安定するためには、腸陽筋が機能していないとできないことになり、腹が据わるという古い言葉につながります。

重たいものをただがむしゃらにあげているだけでは、重たいものをあげられるようになっても、それが野球の競技力向上にはつながらないどころか連載のテーマである
「身体の局所と全身の調和」
「身体と心の調和」
「合理的な身体の使い方」から逸脱しています。
最近の風潮として全てのものが、実践よりも理論、経験よりも知識偏重によって行われています。
特に身体感覚というものは学問になりにくく、研究対象としては非常に難しいものです。しかし、生きた身体【自分自身】をみなければ単なる物としての理論から出発してしまいます。 
     

■冬場のコンディショニング
冬は万物が静かに沈み、消極的な季節。しかし、樹木でも一見枯れているようで、実は土の中で根をどんどん伸ばしています。人間も同じ。冬は発散せずに貯蓄する時期なのです。寒い時期にハードなウエイトトレーニングを行うと、春先に筋肉を損傷、特に筋腱移行部を受傷しやすくなり、疲労が取れにくくなるのもこの時期の特徴です。身体の深部感覚を意識することで浅層筋の力みを消し、負担のかからない程度の負荷で、下半身を中心に多種目を反動を使わずにバランスよく行いましょう。
   
(報知新聞社出版「報知高校野球」2003年1月号掲載)


連載第1回:合理的な身体の使い方と心の調和
連載第2回:筋力トレーニングを再考する
連載第3回:野球の3拍子「走、攻、守」
連載第4回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第5回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第6回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第7回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第8回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第9回:野球の達人を目指すバランストレーニング
連載第10回:野球の達人を目指すバランストレーニング


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